2022年12月5日

血栓症のお薬を服用中のかたへ

■血栓症とは

・血栓症は血の塊が血管を防ぐ病気です
・血栓症は2種類あります
┗動脈血栓:血小板が凝縮してしまう
┗静脈血栓:赤血球とフィブリンが固まる
・血栓症の発症を抑制するために飲むのが抗血栓薬

血栓症の予防や発症後の再発予防のために血を固まりにくくする薬、つまり血をサラサラにする抗血栓薬を服用する患者様が抜歯など出血を伴う外科を行う際に「出血が止まらなくなる」と薬を1週間やめるなど行われるケースがあります。

ある調査で歯科医師にアンケートをとったところ、抜歯時に抗凝固薬(ワーファリン)を休薬、減量する医師が70%、抗血小板薬を中止する医師が86%にも上りました。

「歯科医師が出血で困ると思う」「歯科医師の指示で」という理由が多いようです。また、抗凝固薬を中止した結果、脳梗塞などを起こした例を経験した医師が10%にも上るそうです。

また歯科医師側にも、抗血栓薬を休薬もしくは減量しないと抜歯ができないという考えの方が多いです。

欧米の認識:抗血栓療法は大多数の例では中止してはならない
日本口腔外科学会では、抗凝固薬服用患者が歯科で抜歯などの処置を受ける時のガイドラインもあります。

日本口腔外科学会、日本有病者歯科学会などの学会が合同でまとめた「抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン 2020年版」によると、ごく一部の例外を除いて、抗血栓薬を服用したまま抜歯をおこなうべきとしています。

これは、抗血栓薬を中断して抜歯をおこなうと、血栓・塞栓症を発症したり、死亡することがあるためです。また、抗血栓薬を服用していると抜歯後に血が止まりにくいものの、出血による合併症をおこす危険性は少ないとされています。

1990年代までは抗血栓薬の服用を中止してから抜歯するのが一般的でしたが、1998年にアメリカの歯科医師が「ワーファリンを中断して抜歯した人の0.9%が重篤な血栓・塞栓症を発症し、そのうちの80%が死亡した」という研究発表をしてから方針が変わりました。

手順を踏めば、血が止まらないことはほとんどありません

実際、抜歯したときに血が止まらなかったという話を、聞くことがありますが、そのようなことは、抜歯の最後に膿や不純物を掻き出す処置(抜歯窩掻爬)が不足したときに起こります。

掻爬をしっかりおこない、血液凝固促進剤(スポンゼルなど)を挿入したうえで縫合すれば血が止まらないことはほとんどありません。

抗血栓薬を服用している方は不安を感じられる前にお気軽にドクターにご相談ください。